
(2009年3月18日)
新産業創造 バイオで挑む
九州・沖縄で次世代産業として、バイオ分野への期待が高まってきた。 九州では主力の自動車、半導体産業が不振に陥り、沖縄では観光業に陰りが見える。
一方、バイオは、各地で特産品や技術を生かした研究成果が実り、収穫期へと向かい始めた。 機能性食品や医薬品、バイオ医療など各分野の最前線を追う。
熊本県阿蘇の山並みを望む大型リゾート施設の一角に昨年十二月、キノコを使った健康食品の企画・開発会社、日本免疫研究センター(同県南阿蘇村)が設立された。 設立したのはリゾート施設を運営する阿蘇ファームランド(同)。新会社は今、がん細胞に対する免疫機能を高めるとされる多糖類、ベータ(β)グルカン入りクッキーの発売準備を進めている。
βグルカンを供給するのはポンプメーカーのミゾタ(佐賀県)。 長年、培った水処理技術を生かし、キノコの一種、鹿角霊芝からβグルカンを高効率で抽出する技術を開発。 バイオ事業参入の第一弾として、阿蘇ファームランドに供給した。
年内に3、4商品
異業種の両社を結びつけたのは二〇〇七年に九州経済産業局が機能性食品や健康食品の開発を目指して立ち上げた産学官連携プロジェクト「九州地域バイオクラスター」。
プロジェクトからはまだ商品が生まれていなかったが「年内に3、4商品が市場に投入される」(同クラスター推進協議会)見込みだ。
福岡県久留米市のバイオベンチャー、グリーンペプタイドは最先端のがん治療薬、がんワクチンの開発に取り組む。
「今秋には前立腺がんの患者を対象に大規模臨床試験を始めたい」と郡高秀社長は意欲を見せる。
同社のがんワクチンの治療対象になる前立腺がんの患者は国内で九千人。同社は年間市場規模を数百億円と推測する。
同社と連携する久留米大学はがんワクチンの開発で昨年十二月、国の最先端医療開発特区に指定され、四月にはがんの治療用ペプチドワクチンを自由診察で処方する専門外来を開設する。
福岡県は〇一年、久留米市内を中心に「福岡バイオプロジェクト」を始動。当時二十三社だったバイオ関連企業の数は〇八年末には八十三社と4倍近くに増えた。
グリーンペプタイドはその中核企業。県では久留米地域を世界のバイオ拠点に育てるため、文部科学省が今夏から始める知的クラスター創成事業(グローバル拠点育成型)に名乗りを上げた。
野菜で睡眠改善
沖縄県では、多様な植物や微生物を使った健康食品の開発が相次ぐ、県の起業支援施設、沖縄健康バイオテクノロジー研究開発センター(うるま市)では最新鋭のゲノム(全遺伝情報)解析装置「ギガシーケンサー」を使い、泡盛製造に使う黒こうじ菌のゲノムを解読する研究が進む。
様々な菌種の分析を通じて「泡盛の味や香りをコントロールできるかもしれない」とトロピカルテクノセンター(うるま市)の塚原正俊主任研究員は話す。
ソムノクエスト(那覇市)は伝統野菜「クワンソウ」のエキスに睡眠改善と抗うつ効果があることを突き止め、近くエキス入りゼリーを発売する予定。
生物資源研究所(名護市)は、センダンとハンノキの抽出液にヒトや鳥のインフルエンザウイルスを死滅させる効果があることを確認。「消毒液として秋には発売したい」(根路銘国昭所長)という。
県は〇九年度から「おきなわ新産業創出投資事業」をスタート。総額十億円のベンチャーファンドを作ってバイオベンチャーなどの事業の本格展開を後押しする。
バイオ産業は研究開発段階から「富」を生む収穫期を迎えている。
2009年 3月18日