生体吸収性の「ステント」
直径わずか2ミリ。金属製の筒はよく見ると網目状に細かな切れ目が入り、伸び縮みが可能になっている。しかも金属ながら体内に吸収されてしまうという特徴を持つ。医療と工学の技術を駆使したこの微細な金属は、狭くなった血管を広げるための手術に利用する医療機器「ステント」。 カテーテルで血管に挿入し、風船で膨らませた後、元に戻らないよう固定するために使う。開発した吸収大学大学院医学研究院の江頭健輔博士は、ベンチャー企業先端医療開発(福岡市、豊田秦之社長)を立ち上げ、普及に向けた研究を県内で始めた。
江頭氏が開発したステントの素材はマグネシウムとカルシウムの合金。人体が必要とする元素のみで構成しているため、安全性も担保されているという。
現在使われているステントはステンレス製が主流だ。丈夫でさびにくく重宝されているが、体内に異物として残されるというデメリットがある。江頭氏はその問題を生体吸収性のマグネシウム合金を使うことで解決した。マグネシウム合金は車のエンジンや航空機の部品として利用されており、軽さと丈夫さは折り紙付き。同社は燃えにくいマグネシウムを用いることで、レーザー加工による量産を可能にした。配合するカルシウムの量を変えることで、人体へ吸収される時間も調整可能という。
ステントを使った血管の手術は心臓だけでも日本で年間20万~30万件。世界では100万~200万件に上り、需要は多い。江頭氏は「本社は福岡県だが、うるま市で研究を進めて将来的には県内で製造したい。製品が小さいので物流コストも問題にならない」と話す。同社は100万分の1ミリ単位で分子を加工するナノテクノロジー(超微細技術)の技術も持っており、ナノ粒子で薬の成分を包んで患部へ届けるナノ粒子製剤の開発にも取り組んでいる。
通常の細胞は細胞の隙間が150ナノメートル以下なのに対し、病気の細胞は隙間が200ナノメートルに広がる。その間で分子の大きさを調整すれば、病気の部位だけに薬の効果を届ける事ができ、健康な細胞に負担をかけずに済む。
江頭氏は「沖縄の豊富な天然資源を活用した創薬にも取り組む。医学、薬学、工学の垣根を越え、世界基準の製品を作りたい」と語る。異分野融合型の新しい医療の確立に向け、沖縄から技術を発信するつもりだ。
平成22年3月4日(木) 琉球新報
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