研究開発の背景・研究目的及び目標
今、消費者が農産物に求めるキーワードは、“安全性”、“美味しさ”、“妥当な価格”である。しかし日本の農業の現状は自給率の向上を目指し輸入農産物との競争力の強化を目的とした大量生産化に重点を置いている。生産効率の向上に伴う連作障害などの弊害を克服するために大量の農薬が使用され、食の安全性、美味しさなどが損なわれてしまっている。
消費者のニーズに応えるためには農業を工業化する必要がある。即ち均一で高品質の農産物を安定に生産するシステムの開発である。従来、施設栽培に於いて植物の至適生育を目指して温度、湿度、光量などの環境条件の検討については大きく進展してきた。しかしながら、植物の生育、即ち農産物の生産にとって最も重要な土壌については根圏領域の現象が全くのブラックボックスであるが為に解析がほとんど進んでおらず、農業の工業化が最も遅れた部分である。
本事業化の目的は、物性を人工的にコントロールすることが可能な高分子膜(ハイドロメンブラン)を従来の土壌の替りに使用することによって農業の工業化をより一層、促進することにある。
具体的には本事業で開発するハイドロメンブラン栽培システムは先にも述べたように安全で栄養価が高くかつ妥当な生産コストという消費者ニーズに合致した農産物生産システムである。
しかしながら、本事業で開発するシステムの主要技術は先端高分子膜技術であり、従来の農業技術の開発とは異なるアプローチで進める必要がある。即ち従来の農業技術の先入観がその開発の妨げになる可能性が強い。
具体的には従来の農業技術で充分、経営ができる地域ではなく新しい農業技術なくしては農業経営が困難な地域に於いてはじめてその必要性が理解されるものと考えている。我々は以下に記す理由によって、本技術開発が日本の農業の一助になるものと確信している。
沖縄県は台風と干害、更に亜熱帯気象などと決して農業にとって良好な環境ではないと考えられる。沖縄県の野菜生産は、昭和60年をピークに粗生産額は2/3程度に減少していて、花や熱帯果樹、ゴーヤなどは伸びているものの他の作物は伸び悩んでいる。沖縄県では、年間20,000トンの葉菜、果菜類を県内で生産していて、60,000トンを県外から購入している。その一方で、久米島では水耕栽培の試験を実施し、海洋深層水を活用して培地冷却の試験も成功している。これらの事実は、沖縄県で葉菜、果菜類を生産した場合には、大きなニーズがあることを示している。
一方、我々が開発中のハイドロメンブラン栽培システムは、養液使用量が少なく、冷却コストも安く、雨水などの低質な水の利用も可能でかつ立体栽培が可能である、などの特徴を有していて、沖縄県の農業が抱えている水資源不足、亜熱帯気象、土壌質問題などの諸問題を解決する有効な栽培システムであると考えられる。本事業では沖縄県での需要が大きい葉菜類、果菜類などを生産することを目的とした独自の栽培システム及び関連資材を開発し、沖縄県をベースとして全国に普及させることを目的とする。
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- at 2007年06月08日