成果概要

 本研究は画期的なイネ育種システムを確立するため、平成17年度から19年度まで3年間にわたり研究支援を受けてきた。当社は、このイネ育種システムの確立のために沖縄県石垣市に研究拠点(沖縄研究所)を立ち上げ、以下の研究課題に取り組んできた。すなわち、Ⅰ)コシヒカリに農業上重要形質を付加する育種、Ⅱ)野生イネ遺伝資源を利用した育種母本の作出、Ⅲ)沖縄における世代促進、試験栽培および特性調査体系の構築、並びに、Ⅳ)沖縄における高品質種籾生産・精選・管理体系の構築、である。また、これらの研究開発は、本社(茨城県つくば市)と沖縄研究所(沖縄県石垣市)との間で育種材料を往復させる(シャトル育種)ことによって実施した。以下の研究成果を得た。

沖縄研究拠点の立ち上げ及び充実

 沖縄県の自然条件を十分に活用するため、沖縄県石垣市に研究拠点を設立し、立ち上げと整備を図ってきた。その結果、研究拠点として、研究圃場を確保し、また、温室、実験室、実験用種子整理・保存施設並びに種籾精選・貯蔵施設を備えた沖縄研究所を設置した。

育種・米ビジネス事業ネットワークの形成

 沖縄県、特に石垣市にある独立行政法人・公的農業研究機関や、JA関係者、米加工業者などには、沖縄研究拠点の立ち上げに当たり、多大な協力を承った。これを機に、沖縄県内での育種・米ビジネス事業ネットワークを形成できた。
また、当社が開発した短稈コシヒカリの各地における適性検定試験や米の販売を通じて、全国27道県に渡って、数多くの独立行政法人・公的農業研究機関や、JA関係者、米生産者、農業法人、米流通業者および米小売店と交流・提携できる関係を構築してきた。

Ⅰ)コシヒカリに農業上重要形質を付加する育種

 ゲノム育種法によりインド型品種広陸矮4号の出穂期関連遺伝子を含む染色体領域をコシヒカリに取り入れ、出穂期準同質遺伝子系統が6系統得られた。これらの系統は、コシヒカリと比較して、出穂が3週間ほど早い早生系統から10日ほど遅い晩生系統まで存在し、多様な出穂期を持つことが明らかになった。
富山県が育成した、いもち病に強いコシヒカリ同質遺伝子系統(BL)と当社が育成した短稈コシヒカリ(sd)との交配を行い、交配後代からいもち病に強い短稈コシヒカリ系統(sdBL)6系統を選抜した。そして、これらの系統が実用品種になりうることを明らかにした。
野生イネの幼苗期耐冷性が強い形質をコシヒカリに取り入れて耐冷性極強コシヒカリの育成を開始し、育種初期世代を得た。

Ⅱ)野生イネ遺伝資源を利用した育種母本の作出

 野生イネの農業上有用な遺伝子を広く利用できるようにするため、野生イネW1943 の染色体断片を一部分ずつ栽培イネインド型品種G4に取り入れた染色体断片置換系統60系統を作出した。

Ⅲ)沖縄における世代促進、試験栽培および特性調査体系の構築

 各種イネ品種(系統)を、月1回の頻度で定期的に試験栽培し、沖縄における栽培基本情報の蓄積を図った。
また、国内外の有力な品種の特性を調査する目的で試験栽培を行った。
これら、異なる季節や多様な品種を用いて行った試験栽培から得られた知見により、沖縄での世代促進、試験栽培および特性調査体系を構築し、「沖縄研究拠点におけるイネの栽培・管理マニュアル」を作成した(添付資料1:A4 22枚)。

Ⅳ)沖縄における高品質種籾生産・精選・管理体系の構築

沖縄県における種子産業を創出するため、種籾生産・精選の条件を3年間検討した結果、第1期作では安定して高品質種籾を生産することが可能であることが明らかになった。一方、第2期作では台風に逢うリスクが高く、安定して高品質種籾を大量に生産することは困難であるが、少量の研究用種籾であれば生産可能であることが明らかとなった。これらの種籾生産で得られた知見を基に、「沖縄研究拠点における種籾生産のための標準作業マニュアル」を作成した(添付資料2:A4 17枚)。

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