研究開発の背景・研究目的及び目標
近年、ヒトゲノム解明に次いで、生物の持つ膨大な情報の解明にゲノム研究とプロテイン研究とはますます迅速高効率化が求められている。
産生するタンパク質の意義の解明や同定が盛んとなり、プロテオミクス研究において生体内のタンパク質を同定・機能解析することはバイオサイエンスのパラマウントである。
当該分野のブレークスルーのためには、古典的二次元電気泳動や高額な質量分析装置に依存しているプロテオーム解析を発展させる必要がある。生体機能において最も複雑で多様性の高いタンパク質検出に関しては、プロテインチップが提唱されているが、実用性のあるプロテインチップは未だ見られない。
そこで、軒原らは合成ペプチドをアレイとして用いたバイオチップを提唱した。
この独創的な発想はペプチドを機能特性別や立体構造別に種々デザイン(設計)し、多種のペプチドからなるライブラリーを構築し、機能の本質であるタンパク質・タンパク質間相互作用をミメティックさせるものである。
生物化学的見地からデザインした機能性ペプチド分子は、タンパク質よりも低分子なためデザインしやすく、これをアレイとして基板上に固定化し、そこで生化学的な反応を行い、分子認識を検出するためのチップを開発する。
本コンセプトによる合成ペプチドアレイは使用目的を特化することなく、生体機能を模した分子認識に関する検出の全てに応用できると考えられる。生体内で機能するタンパク質の同定・定量法の開発は、細胞機能解明のみならず、診断治療などでも重要なツールとなることはいうまでもない。
機能性ペプチドチップの応用によりタンパク質の同定・定量は迅速簡便となり効率は飛躍的に向上すると考えられる。本プロテインチップの応用は、研究目的は勿論のこと、診断や健康モニター、環境、食品検査など、幅広い分野で用いることができため、製品が上市されれば、その需要はきわめて大きい。
研究統括者である軒原と、その共同研究者である東京工業大学教授・三原は、デザインしたペプチドをアレイ上でタンパク質と認識させた時に得られる蛍光強度をパターン化し、各タンパク質に特有なパターンを得る手法(フィンガープリント法)を発明した。
この原理は、デザイン性に優れたペプチドをセンサー素子として用い、これらをアレイ化することにより、個々のペプチドとタンパク質の認識がDNAチップのように1対1ではなく、類似タンパク質の場合でも微妙な認識パターンの差を生じ、これによりタンパク質の同定、定量が可能となることを示したものである。
基盤技術開発の初期実験では100種程度のペプチドライブラリーによる結果であったが、アレイとするペプチドの種類を増加し、アミノ酸配列に工夫をし(デザイン)、またアレイ化法の工夫によって精度は向上することに確信を得た。
本アイデアと基礎検討の成果を“実用化”する目的で軒原はベンチャー起業をこころざし、株式会社ハイペップ研究所を設立した。越えるべきハードルはなお高く、作製するライブラリーの数も多いが、これまでの基礎検討で得た知見を生かし、また申請済みの特許を武器に、世界に類のない、低価格で扱いやすい次世代プロテインチップの実用的製造法を確立することを目標として本プロジェクトは進められた。


