株式会社ハプロファーマ

研究開発の背景・研究目的及び目標

 当社の事業目的は、最先端の遺伝子機能解析技術を応用して、一人ひとりの健康と生活の質向上に最適なヘルスケア製品・健康支援サービスを提供することである。それには、未病状態における、健康状態や身体的状況の程度を客観的に評価するための指標となる、バイオマーカーの開発が重要な鍵となる。バイオマーカーを利用した健康度の判定、遺伝的体質の判定結果と検診結果とを合わせることで、強い動機付けに基づいた生活習慣改善のための保健指導が可能となる。                                     
 特に、2008年4月から特定健診制度が開始され、生活習慣病・メタボ予備軍に対する特定保健指導が行われる。まだ、効果的な指導法が無く、保健指導の十分な受け入れ態勢が無い現在、多くの「メタボ難民」の輩出が懸念されている。そのようななか、健康度判定や、保健指導ツールの市場は今後急拡大することが見込まれている。また、バイオマーカー関連市場は、健診や保健医療分野に限らず、観光やレジャー、スポーツ、美容など、様々な健康関連事業にまで広範に拡大する。                                
 本研究では、バイオマーカー研究・評価のための基盤として、琉球大学と沖縄県在住の健康長寿者と生活習慣病予備軍を対象にした高品位の「バイオバンク沖縄」を構築した。本研究提案時には1千例を目標としたが、複数の検診機関との協力体制が円滑に構築できたことから2千例へと上方修正し、将来的には5千例を目標とする。本研究により興味深いデータ解析結果も出始めている。                                      
 さらに、バイオマーカーの臨床的評価のために、生活習慣病(糖尿病)予備軍に対する予防介入研究を開始した。そこでは、食事運動指導(介入)の程度と、それにより変化する身体データを経時的に収集するために、携帯電話を利用した効率的なデータベースシステムを構築した。                                         
 また、参加者には、肥満関連体質遺伝子と脳卒中ハイリスク体質遺伝子の判定を、さらに糖尿病予防介入参加者には、3つの糖尿病関連遺伝子の判定結果も通知して、健康指導に活用した。   
これらの取り組みは「かりゆし健康長寿実現化プログラム」と称し、先ず沖縄県民の健康長寿復活に役立てつつ成果を取得する。将来的には、個々人の健康度や遺伝体質に応じた効果的な高付加価値型健康支援サービスとして、国内アジア地域において様々な形で事業展開していく計画である。

研究体制

①研究組織

 沖縄県うるま市にある「沖縄県健康バイオテクノロジー研究開発センター」内に入居し、ゲノム機能解析室とゲノムデータ解析研究室からなる沖縄研究センターを設置した。沖縄県在住者を中心に8名の研究スタッフを雇用し、本研究の統括管理者を置いて研究を進めている。また、琉球大学との共同研究として、遺伝子実験センターをはじめ医学部、臨床検査部の研究者、ならびに当社研究スタッフからなる、「かりゆし健康長寿実現化研究プロジェクトチーム」を結成した。さらに、遺伝情報管理責任者ならびに遺伝カウンセラーも設置した。各研究協力機関には、研究責任者、個人情報保護管理責任者を設置し、それらを中心に研究体制を構築した。

②管理体制

 研究統括管理者を中心に管理体制を敷いた。琉球大学との共同研究では、バイオバンク研究統括責任者として、遺伝子実験センターの長嶺勝准教授を中心に構築や運用を進めた。本研究プロジェクトチームの構成研究員からなる研究会議を設置し、研究サブテーマの提案や承認、新規共同研究や研究協力者などの追加変更に関する審議承認、運営の討議と意思決定を行う体制を構築した。研究倫理面では、06年に三省庁指針に準拠した倫理委員会が琉球大学に設置され、研究計画の審査、定期的な報告ならびに監査を受けている。

③研究者氏名及び人員

顔 瑾  バイオ研究部長
花城 薫   主任研究員
吉田 安彦  主任研究員
青山 みさ子 主任研究員
岩本 恭典  主任研究員
平松 鉱之介 研究員
喜屋武 麻美 研究員
座安 樹里  技術補助員


④外部からの指導・協力者名及び指導・協力事項

琉球大学
長嶺 勝 遺伝子実験センター准教授  研究統括
渡部久実 遺伝子実験センター教授   研究管理
大屋祐輔 医学部准教授        データ解析
森 直樹 医学研究科教授       細胞遺伝子機能実験
只野昌之 医学研究科准教授      細胞遺伝子機能実験

その他共同研究機関

三木哲郎 愛媛大学大学院医学系研究科生命多様性医学講座加齢制御内科学分野(老人科)教授 
遺伝/臨床データの解析
田原康玄 愛媛大学大学院医学系研究科統合医科学講座  講師 遺伝/臨床データの解析
佐々木敏 東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学   教授 栄養調査およびその解析
金城幸善 財団法人沖縄県総合保健協会      理事長 提供者の試料等の収集
比嘉国朗 医療法人友愛会豊見城中央病院    理事長 提供者の試料等の収集
仲田清剛 特定医療法人敬愛会ちばなクリニック 院長 提供者の試料等の収集

成果概要

バイオバンク沖縄の構築

①沖縄県居住者を対象とした健康長寿者と生活習慣病予備軍の高品位バイオバンク(バイオバン ク沖縄)を構築することができた。また、検診データと遺伝情報のデータベース化を個人情報保護のうえで実施可能な基盤が沖縄県内に構築できた。

②ゲノム研究の基盤整備、研究協力機関の設定と連携体制の構築、臨床データの収集、臨床試料の保管管理体制作りのためのノウハウを蓄積した。

③個人情報匿名化、参加者への同意説明、ゲノムデータの先端的な解析など、これまで沖縄には不在であった新たな資質の要員の新規採用や人材育成を行い、人的資源の強化につながった。

④特定健診制度下での特定保健指導に活用可能な健康指導ツールのプロトタイプの開発を行った。指導用コンテンツの実証や、臨床エビデンス収集の基盤となる予防介入に向けた、いくつかのプログラムを構築した。

⑤バイオバンクで健康指導に用いた5SNPを卓上で、簡便効率的に同時解析可能な遺伝子判定装置開発に向けた反応試薬の設計の研究も行った。ひとつの試験管内で精製から反応、検出までできるキットの雛形が完成した。今後、口腔粘膜や爪を用いて卓上で簡便に遺伝子判定が可能な装置を診断機器メーカーと開発段階に進めて、様々なサイトで利用可能な製品・サービスに育成していく。

⑥臨床データに基づく生活習慣病(主に肥満)の研究体制を、琉球大学と県内の予防医療中核拠点である沖縄県総合保健協会とで構築し、1年間で1千例以上のデータを収集し解析した。その後、さらに豊見城中央病院、ちばなクリニックなどの検診機関が参加して、協力体制を構築した。

⑦携帯電話を用いた個人データを収集するツールを開発し、今後汎用性の高いサービスを展開した。

⑧最先端の高速・高効率・低コストのSNP解析体制を沖縄研究センター内に設置し、解析技術ノウハウの蓄積、試料保管受入れ体制を構築した。全実験手技、手順に関する標準化操作手順(SOP)を整備した。情報解析技術や最先端マシンなど装備面での充実化もできた。

⑨本研究開発の成果として、沖縄県で自己完結的に、住民の検診データとバイオバンクに基づく研究開発体制と、健康サービスの評価開発ができる体制が構築できた。また、バイオバンク試料の保管管理体制も構築できた。この事により貴重な長寿沖縄の遺伝子研究資源が、県外や海外の研究機関に無秩序に流出して解析されることが防げる。

生活習慣病(糖尿病・肥満)研究のためのバイオマーカーの同定

①バイオバンクでは4つの肥満関連遺伝子と、喫煙によって脳卒中発症リスクが上昇する遺伝子について、参加者の中で希望者に対して判定結果を開示してきた。また、糖尿病予備軍の介入では、3つの糖尿病発症リスク遺伝子の判定結果も開示してきた。そして開示に際して使用する健康指導のための配布資材や、検診医が指導の参考にするための資材なども開発した。

②本研究において、EG法を用いて糖尿病治療薬への応答性や異なる個体由来の細胞に基づくデータセットを取得した。これらのうち、疾病発症や診断に関係する候補については、バイオバンクで収集したDNAを対象に、ジンチップやマスアレイによるSNPタイピングを行い、臨床変量の層別化による相関解析を実施し、臨床統計学的に有意なSNPマーカーを同定している。

事業化に向けての課題及び今後の取り組み

 次年度から特定健診が開始されるにあたって、特定保健指導の受入れ先が不足し、数多くの「メタボ難民」が発生することが社会問題として懸念される。そのような状況の中、当社は以下の事業を展開していきたい。

①機能性食品の効果判定法への応用

 疾患モデルの培養細胞系を用いた食品の機能性成分に対して、特異的に応答性するSNPデータ取得・パネル化を進め、食品成分感受性SNPと、生活習慣病関連SNP、それらに重複する遺伝子群の解析を行う。特に生活習慣病関連遺伝子のバイオマーカー候補抽出においては、治療薬応答性遺伝子の網羅的なリスト化も有用である。機能評価においては、細胞応答性評価系も構築したので、今後、機能性食品の効果や毒性の個人差などを明らかにする方法として、幅広く利用できる。

②予防医療のためのバイオマーカーを用いたリスク診断法の開発

 バイオバンク沖縄では、検診受診者のなかから参加者を募集し、収集したDNAから健康維持に有用な遺伝情報の一部を再連結して返すことで、遺伝体質に基づいた健康管理に役立ててもらう仕組みを構築した。将来は、検診受診者のデータを長期追跡調査する遺伝疫学的な観察手法から、特定の疾患への発症に関連するSNPを明らかとし、易罹患性の予測や、糖尿病予備軍の転帰、合併症の種別・発症時期予測の研究を行う。また生活習慣病発症高リスク者への予防介入後の日々の体重・体脂肪率などのデータ推移と、食事運動量の申告データを携帯電話で効率的に収集する手法を開発した。今後、それをデータベース化し、介入の度合いと運動食事介入の効果を個人ベースで解析する。当社では、すでに県内のスポーツクラブチェーンとの提携による有効な指導サービスの開発計画をしている。その中で開発した携帯電話を用いたデータ収集ツールは、介入プログラムを日々きちんと実行しているか、その定量的な度合いも含めて自己申告して、それらをデータベース化する上でも重要な役割を果たすことが期待される。

③バイオマーカーを用いた科学的根拠に基づく生活療法の開発

 運動食事指導に基づく介入の度合いは個人によって異なり、医薬品や食品の介入における投与群/非投与群の正確な割付は実際困難である。したがって、個々人に日々、運動食事量を記録して申告してもらい、実際の介入度合いを申告に基づき層別解析することが必要である。そのため、糖尿病予備軍に対する生活療法の評価を行うための基盤を構築した。今後は、介入プログラムの実行具合を定量的に自己申告してもらうので信頼性が高くより良い情報を蓄積することが期待できる。今後、糖尿病予備軍を対象としたデータの収集を進め、その成果を予防医療や医薬診断薬の研究開発、健康支援サービスの開発に応用する。

当該プロジェクト連絡窓口

株式会社ハプロファーマ 沖縄研究センター 解析チーム 主任研究員 吉田安彦

メールアドレス yoshiday@haplopharma.com
〒904-2234
沖縄県うるま市州崎12-75
沖縄バイオテクノロジー研究センター212
電話    098-894-9027
ファックス 098-894-9028