株式会社シー・アイ・バイオ

研究開発の背景・研究目的及び目標

本県を含む南西諸島のさとうきびの生産コストは、海外主要産糖国のそれに比べると、かなりの高コストとなっており、このような厳しい条件下で、さとうきび産業を維持して行くためには、付加価値の高い加工製品や独自性の高い新規な商品を開発する必要がある。サイクロデキストランは、1993年に発見された新規な環状イソマルトオリゴ糖であるが、その抗う蝕機能が期待されながらも、開発条件が困難という事情から、研究が中止状態となっていた。非う蝕性の砂糖代替甘味料である糖アルコール類が近年、虫歯予防甘味料として高価であるにもかかわらず需要が定着している点を考えると、低コストで抗う蝕性を持った甘味料が開発されれば、新規な機能性砂糖として、砂糖の需要量が回復し、低迷する製糖産業の業績回復と国民の健康にも寄与できるとの考えから、サイクロデキストランの実用化すなわち、砂糖を使用する様々な食品分野での利用を目指して、低コスト製造技術の開発、安全性の確認、機能・効果の実証および商品開発を目的として研究開発を開始した。研究開発の目標は下記のとおり。

(1) サイクロデキストランの高効率・低コスト製造技術開発
(2) 高分子CI(CI-10)高生産菌株の育種改良および高度精製分取技術の開発
(3) サイクロデキストランの安全性の確認
  ① マウスによる最大無作用量確認(12週反復投与毒性試験)
  ② ヒトによる安全性確認(4週連続摂取試験)
(4) サイクロデキストランの機能・効果の実証
① 各種CIサンプルのう蝕菌を用いたう蝕抑制効果確認 - in vitro
② ヒトにおける歯垢付着抑制効果確認- in vivo
  ③ ラットにおけるう蝕抑制効果確認- in vivo
(5) サイクロデキストランの包接機能に関する解明
(6) サイクロデキストランを用いた製品開発設計および評価

研究体制

(1)研究組織

宮城 貞夫 (代表取締役社長) 本補助事業統括者
  |
田村 博三 (取締役製造部長) 主任研究員
  |
儀部 茂八 (製造部部長代理) 副主任研究員
伊是名信一郎 研究員
戸田 海士   研究員 

(2)管理体制

中地 昌顧 (常務取締役兼管理部長)
  |
田村 博三 (取締役製造部長) 主任研究員
各研究委託団体

(3)研究者氏名及び人員

田村 博三   主任研究員
儀部 茂八   副主任研究員
伊是名信一郎  研究員
戸田 海士   研究員

(4)外部からの指導・協力者名及び指導・協力事項(委託研究を含む)

・(独)農業・食品産業技術総合研究機構・食品総合研究所
 舟根 和美 (微生物利用研究領域・発酵細菌ユニット長) - 解析全般及び包接機能解明

・大阪樟蔭女子大学・学芸学部・食物栄養学科
 川端 康之 (食品化学研究室・准教授) - 高分子CI高生産菌株の育種改良

・鶴見大学歯学部・大学院
 今井 奨 (探索歯学講座・専任講師) - ミュータンスレンサ球菌によるCIの抗う蝕評価

・琉球大学・遺伝子実験センター(現分子生命科学研究センター)
 屋 宏典 (教授) - マウスによるCIの最大無作用量の確認

・大阪大学大学院・歯学研究科・小児歯科学教室
 大嶋 隆 (教授) - ラットによるCIのう蝕抑制効果の確認

成果概要

(1) サイクロデキストランの高効率・低コスト製造技術開発MF、UF、NF膜装置の導入や
   酵母を用いるなどして、実用レベルの低コスト製造技術を開発した。
(2) 高分子CI(CI-10)高生産菌株の育種改良および高度精製分取技術の開発実用レベ
   ルには達していないが、デキストラナーゼの活性が弱く、CI-10を優先的に生産する
   特性を持つ株を取得した。分取については、CI-10とその他のCIとの完全な分離は難
   しいが、純度75~90%のCI-10の分取が可能となった。同時に、CI-7~9 richの分離
   も可能となった。

(3) サイクロデキストランの安全性の確認

  ① マウスによる最大無作用量確認(12週反復投与毒性試験)
    CIの慢性毒性を示す結果は認められず、このことからCIが生体へ障害を及ぼす最小摂取量は
    2000mg/kgBW/day 以上と推定され、CIの食品としての安全性に問題は無いと報告された。
  ② ヒトによる安全性確認(4週連続摂取試験)
    摂取量1日2gと4gの2群、各10名・合計20名による4週間連続のCI摂取試験を実施したが、自己
    都合による1名の脱落者を除く19名の試験完了者の全ての検査項目において、臨床上問題とな
    る所見は見られず、CIの安全性が確認された。

(4) サイクロデキストランの機能・効果の実証

  ① 各種CIサンプルのう蝕菌を用いたう蝕抑制効果確認 - in vitro
    各種CI plusのGTF阻害評価(不溶性グルカン付着試験)、発酵性評価(pH試験)、人工口腔装置
    による評価試験等を実施した結果、CI plusは、S.mutans およびS.sobrinusに発酵されず、これ
    らミュータンスレンサ球菌のGTFによる試験管壁へのバイオフィルム形成(不溶性グルカン付着)
    を濃度依存的に阻害することが確認された。また、人工口腔装置を用いた検討では、CI plus
    は、ミュータンスレンサ球菌のバイオフィルム形成を阻害し、バイオフィルム直下のpHの低下を遅
    延させ、エナメル質脱灰を阻害することが確認された。他のう蝕予防素材のGTF阻害活性評価
    によるCI との比較試験では、CI-7~9とCI plus の各種サイクロデキストランと糖アルコール類に
    ついて、ショ糖存在下でのS. sobrinus 粗GTFを用いて不溶性グルカン生成量を比較した結果、
    糖アルコール類と比較して、CI の不溶性グルカン合成阻害効果は格段に高いことが確認され
    た。

  ② ヒトにおける歯垢付着抑制効果確認- in vivo
    全体としては、CI含有飲料は、プラーク指数に影響を及ぼすことはなかったが、歯垢の付着しや
    すい群と歯垢の付着しにくい群による層別解析では、歯垢の付着しやすい群では、プラーク指数
    を対照飲料群に比べ有意に低下させた。唇頬側と舌側にわけて解析した場合では、有意な差は
    認められなかったものの抑制傾向を示し、CIは歯垢付着を低減させる上で有効であることが示唆
    されたと報告された。
  ③ ラットにおけるう蝕抑制効果確認- in vivo
   虫歯菌に感染させたラットに、各割合(1,2.5,5,10%)のCIを46%という高濃度ショ糖含有飼料
   に添加し、8週間連続投与した群とCI無添加対照群との比較では、全てのCI添加群のプラーク指
   数およびう蝕スコアは、無添加対照群のそれに比べて有意に低い値を示し、う蝕の発生は有意に
   抑制されたと報告された。

(5) サイクロデキストランの包接機能に関する解明
   各種のゲスト物質による包接試験で、サイクロデキストランの包接機能に関する知見を得た。

(6) サイクロデキストランを用いた製品開発設計および評価
   砂糖、CI、その他甘味料および食品添加物による甘味料の試作及びう触抑制効果の評価試験等
   による開発を行い、CI配合の黒糖甘味料を製品化した。

事業化に向けての課題及び今後の取り組み

サイクロデキストラン(CI)には、主として、う蝕予防保健素材と包接材への用途が見込まれるが、包接機能に関しては、高純度CI-7~9およびCI-10の高効率生産技術の開発途中であり、ユーザー企業からの照会は多いものの、供試可能なCI rich量が絶対的に不足しており、この分野の事業展開は当面は困難な状況にある。これに対して、う蝕予防保健素材としては、低純度のCI plus(CI類含有素材)に十分に高い歯垢生成抑制効果があることが確認されており、コスト的にも事業化が可能な段階となってきている。

事業化へ向けての課題

サイクロデキストラン(CI)の事業化にとっての問題点は、まず、CI が新規物質であることから産業的にその利用例が全くなく、市場に対してその知名度が低い点である。次に、CIの食品への添加利用について、その加工時の問題点などがいくつか出てきている。これらは、CIが新規な素材でありノウハウの蓄積が無いためで、試作・分析・検討にやや時間を要する。さらに、CI plusを使った製品化を考えた場合、その機能、すなわち間接的な虫歯予防機能を謳う場合の表示の問題がある。健康強調表示に関しては制限を受けることになり、ユーザー企業に対して具体的な商品コンセプトを提案するのに困難な面があった。必要な対応としては、まず、機能性について十分なデータをユーザーに示す必要があり、これまでのin vitroにおける種々の試験データの他に、特にin vivoにおけるエビデンスの取得が必要であったため、ヒトおよび動物での効果試験を実施し、エビデンスの構築を図り、併せて、CIの認知度向上を図るために、ホームページ開設、学会発表、ユーザー企業への広報等に努めた。

今後の取組み

今後、CI plusを添加した製品として、主に口中菓子、チョコレート菓子、幼児用菓子あるいは介護食などの製品開発を検討して行くが、自社での開発には限界があり、引き続き、より多くのユーザー企業に対し、サンプルワークとプレゼンを通じて、それぞれの分野での利用方法について検討を依頼しながら、素材としてのCI plusの販売につなげて行く。なお、これらのユーザー企業が試作したCI添加製品の付着抑制評価試験(in vitro)を当社にて行い、その効果の確認を行いながら、商品の使用形態ごとに適切なCI濃度となるよう製品設計に協力して行く考えである。

一方、包接材としてのCI の需要については、将来的には食品や医薬品などに多くの用途が見込め有望と思われるが、供給のためには、高分子CI(CI-10)の高効率生産技術の確立すなわち、CI-10高生産菌株の育種改良および高度精製分取技術開発が必要である。これまでに、菌株については育種改良によりある程度酵素活性を向上させたが、実用化レベルの菌株の取得までに至っていない。しかし、デキストラナーゼの活性が弱く、CI-10を優先的に生産する特性を持つ株を取得したので、今後、この株の実用化へ向けた育種改良を継続して行く。

また、最近、抗生物質耐性付与により、タンパク合成能が向上することが発見されたが、これをCI生産菌の育種に応用する研究が始まっており、既にこれらの三重変異の導入により、CI合成酵素生産活性が実用株の10倍程度に上昇したことを確認した。また、
種々の包接機能の効率的解明のためには、専門的機関または企業を中心に進めることが求められるが、十分なサンプル量提供のためにも、高分子CIの高効率生産技術の早期開発が求められている。

当該プロジェクト連絡窓口

株式会社シー・アイ・バイオ
常務取締役  中地 昌顧
メールアドレス m.naka@c-i-bio.co.jp
〒903-0124 沖縄県西原町字呉屋86番地
電話/FAX 098-945-0938