オーピーバイオファクトリー株式会社

研究開発の背景・研究目的及び目標

亜熱帯に位置する沖縄県は多様な生物資源に恵まれている。研究者や企業が,それらの生物資源を利用して医薬品,健康食品,化粧品の開発を企画した場合,それぞれが個別にアクセスして研究開発を行っているのが現状である。しかし,個別に研究開発を行った場合,材料収集においてフィールド慣れしていない場合幅広く種類を集めること,量を確保することは困難であることが予測される。更に陸上であったらまだ良いが,対象が海洋となるとその困難さは倍増することが予測される。沖縄県の生物資源を使って各研究者,企業に医薬品,健康食品,化粧品の開発を推進してもらう為にも生物資源ライブラリーの構築及びデータベース化が必要であると考えられた。

これまで約30年にわたり,海洋生物のもつ天然化合物から医薬品を見出そうという試みがなされてきた。ある意味,海洋生物の天然物に関する研究は歴史が浅いのである。それでも,その間の極めて多くの研究の結果,医薬品として有望な化合物がいくつも見出されてきた。そのうち,いくつかの海洋生物に由来する天然化合物が臨床段階にはいっており,重症の慢性疼痛に対する非オピオイド性鎮痛剤Prialt(一般名ziconotide;イモガイ由来の化合物)はヨーロッパとアメリカにおいて承認され現在販売中である。また,ecteinascidin 743(群体ホヤ由来の化合物)は,新しい抗がん剤として上市されようとしている。また,複数の抗がん剤が臨床試験中である。ところで,これら有望な活性を示す天然化合物群はほとんど例外なく世界中の熱帯・亜熱帯に生息する海洋生物から得られている。

この理由は不明であるが熱帯・亜熱帯地域では生物多様性が幅広いことと考え合わせて説明されている。つまり,日本において,地理的にこのような有望な化合物を含む海洋生物が生息する地域は限られるが,沖縄県は全県がその対象地域となる。そのような観点から日本においても数大学の研究グループによって沖縄県産の海洋生物を対象として有用活性物質を探索する研究が行われてきた。しかしながら,沖縄の海洋生物からは今までのところ医薬品開発に直接つながるような化合物は見出されていない。これは,採取対象生物がおもに研究者自身によって行われており,潜水作業および採集技術などに精通した潜水業者が行っていなかったことも一因と考えられる。 

弊社のグループ会社である海洋プランニング㈱は,環境調査や環境アセスメント等に伴う海洋生物調査を中心に行っている。日本6箇所に事業所を置き,全国の海で潜水を行い海洋生物の分布調査を行ってきた。中でも沖縄においては,数ある調査会社の中でも,いち早く海洋生物調査を業務として開始し,県内でも有数の調査実績を挙げてきた。我々が潜水調査をしていて感じていたことは,沖縄には非常に多様性に富んだ生物が生息していることである。ある時,某製薬会社の天然物創薬研究者に,弊社業務のことをお話ししたところ,非常に興味を持っていただき,是非,創薬の為のシーズ化合物探しに使用するため,海洋生物をサンプルとして欲しいということになった。もし,沖縄の海に存在する多様性に富んだ生物が医薬や機能性食品に応用できるのなら面白いのではと感じたのが本研究開発,事業化を目指したキッカケである。

本研究開発では,沖縄県の地域特性である生物多様性に富んだ亜熱帯生物資源を収集し生物資源ライブラリーを構築することを目的とした。ライブラリー構築にあたって,ユーザーへの聞き取りによるニーズ調査を行い,実際にユーザーが活用し易いライブラリー構築を目指した。生物資源収集においては,これまで培った海洋調査技術を活かし,サンプリングを行い,海洋動植物はエキス化を行い,エキスライブラリーの構築を行い,海洋微生物,陸上微生物については分離株ライブラリーを構築後,培養,抽出して培養後エキス化を行い微生物培養液エキスライブラリーを構築する。さらにそれらエキスライブラリーは販売すると供に共同研究先と供にアッセイ,スクリーニングを行い活性化合物を単離して化合物ライブラリーを構築することを目的とした。収集し,採集地点情報,生物分布状況,生物の特性(シーケンス情報,種同定),エキスプロファイル情報,アッセイ情報を付加しデータベース化を行い,より付加価値の高いライブラリーを構築する。

研究体制

(1) 研究組織

沖縄県石垣市に研究開発の拠点である石垣研究所を建設し,生物資源収集のコアとした。生物資源収集から採集的には化合物精製まで,共同研究先を含め効率的に分業できる体制を構築した。
以下研究開発の体制を示す(図1)。

①素材収集
 OPBIO,海洋プランニング㈱及び地元の漁師さんにて行った。
②微生物株分離
 微生物株分離作業は,上記採集資源を利用し,OPBIO,産業技術総合研究所,製品評価技術基盤
機構,沖縄工業高等専門学校にて行った。
③エキス化
 採集した生物資源のエキス化はOPBIO及び産業技術総合研究所にて行った。
④プロファイリング
 得られたエキスのプロファイリングはOPBIO,産業技術総合研究所にて行った。
⑤化合物単離
 化合物の単離はOPBIO,東京海洋大学,琉球大学及び産業技術総合研究所にて行った。
⑥アッセイ,スクリーニング
 アッセイ,スクリーニングはOPBIO,琉球大学,東京海洋大学,産業技術総合研究所,名古屋大学,
群馬大学,鹿児島大学,北里大学,沖縄高専で行った。

(2)管理体制

研究統括管理者は現代表取締役の金本昭彦が勤め,OPBIO石垣研究所,共同研究先の研究開発の進展状況把握,事業化計画の策定を行った。

(3)研究者氏名及び人員

研究員1
氏  名:藤原健史
職  名:生物資源グループ サブリーダー

研究員2
氏  名:安慶名美香
職  名:生物資源グループ 

研究員3
氏  名:栗原祐子
職  名:生物資源グループ 

研究員4
氏  名:藤原亜美
職  名:生物資源グループ 

研究員5
氏  名:神谷洋介
職  名:生物資源グループ 

研究員6
氏  名:福原麗子
職  名:生物資源グループ 

研究員7
氏  名:広瀬(安元)美奈
職  名:生物資源グループ 

(4)外部からの指導・協力者名及び指導・協力事項

所  属:東京海洋大学
氏  名:永井 宏史
職  名:教授
導又は協力を受ける事項:エキスライブラリー品質の検討,生理活性物質探索(各種アッセイ)

所  属:琉球大学
氏  名:田中淳一
職  名:助教授
指導又は協力を受ける事項:ライブラリー品質の検討,生理活性物質探索(各種アッセイ),化合物ライブラリー構築

所  属:産業技術総合研究所
氏  名:新家一男
職  名:生物情報解析センター 機能ゲノムグループ ケミカルバイオチームリーダー
指導又は協力を受ける事項:有効成分スクリーニング,化合物単離

所  属:東京大学
氏  名:渡部終五
職  名:教授
指導又は協力を受ける事項:メタゲノムライブラリーに関するアドバイス

所  属:㈱ハイファジェネシス,玉川大学
氏  名:奥田徹
職  名:CEO,教授
指導又は協力を受ける事項:生理活性物質探索(各種アッセイ),ライブラリー共有,営業支援

所  属:沖縄工業高等専門学校
氏  名:池松真也
職  名:教授
指導又は協力を受ける事項:微生物(酵母,乳酸菌中心の分離,スクリーニング)

所  属:製品評価技術基盤機構(現北里大学)
氏  名:中島琢自
職  名:研究員
指導又は協力を受ける事項:微生物分離,同定法指導

所  属:国立科学博物館
氏  名:細矢 剛
職  名:研究主幹
指導又は協力を受ける事項:微生物分離指導

成果概要

(1)実験設備

静物資源収集拠点及びエキス抽出,分画,微生物分離,培養設備を導入した研究所を石垣島に建設した。沖縄県全域にて収集した生物資源をOPBIO石垣ラボに集積してライブラリー構築を行った。

(2)海洋生物エキスライブラリー構築

①サンプリング
海洋生物サンプリングは資源保護とコンプライアンスに留意して,現在八重山海域,沖縄本島を中心に行っており,現在までに1117検体の海洋生物をサンプリングした。構成は約6割が海綿,2割が海藻,1割がソフトコーラル,残り1割がその他海洋生物となっている。

②海洋動植物同定
採集した海洋動植物は弊社で同定できないものは外部機関へ依頼している。海綿類については東京大学の伊勢氏(国内で唯一海綿類の同定ができる人物)に依頼した。属レベルで同定が止まる種も多いが,そういった種はエキスに活性が見られた時点で更に種同定作業に進める。ソフトコーラルは,海洋プランニングで行うか,イスラエルのBenayahu先生同定を御願いした。その他生物種についても,グループ内で同定が困難な場合は協力を依頼している先生方に同定をお願いしている。

③海洋動植物エキス化
採取した海洋生物サンプルは,一時冷凍ストックそのままメタノール抽出し,その後,酢酸エチルと水にて分配し,1種当り2検体のエキスを作製している。現在,エキス数は約1500検体となっている。作製したエキスは,一部販売用にDMSOに溶解した状態で保存し,その他は凍結乾燥後-20℃の冷凍庫に保存している。エキスは,共同研究先のアッセイ用,製薬,健康食品会社への販売に使用している。また,自社ではHPLCによるプロファイリングを行い,データベースに加えている。

また,海藻や陸上植物などの食歴が確認されている素材に関しては,サンプルを乾燥させた後,50%エタノール水溶液で温抽出を行い,抽出液を濃縮・乾固させ,エキスとしている。それらは約100検体だが,今後,さらに検体数を増やすと同時に自社及び共同研究先でもアッセイも行っていく。

(3)化合物ライブラリー構築

得られたエキスは,HPLC,UPLC/MSを用いてプロファイリングを行ってエキスの付加情報をしてデータベース化している。
琉球大学 田中先生, 海洋大学 永井先生, 産総研 新家先生との共同研究において,弊社で採集した海洋生物エキスから,既知中心であるが化合物ライブラリーを構築して頂いている。これらは, 後述する各所でのスクリーニング結果を基に分離された化合物を含み, 現在では100種類程度の化合物を集積している。これら化合物は現在も増加中であり,今後更に化合物数を増加させる。

(4)微生物資源ライブラリー構築

①海洋微生物分離
採集した海洋生物及び,海底泥,漂流物などから,糸状菌及び放線菌を中心に分離している。現在,糸状菌300株,放線菌2200株,バクテリア1000株を分離して,-80℃の冷凍庫にて凍結保存している。海洋由来放線菌については,塩を要求する株に新種が高頻度で確認され,更にそれらの株は新規の化合物を高確率で生産していることが確認された。OPBIOでは現在,塩を要求する株を中心に収集している。

②陸上微生物分離
陸域で採集した土壌,リター等から,糸状菌及び放線菌の分離を行なっている。現在まで糸状菌400株,放線菌107株を分離し,海洋微生物と同様に-80℃の冷凍庫にて凍結保存を行っている。

③酵母・乳酸菌分離
地元に伝承され効能があるとされる素材や採集した海藻,果物,野菜などから酵母,乳酸菌の分離を行なっている。現在まで酵母300株,乳酸菌300株を分離し,-80℃にて凍結保存をしている。

④微生物培養液エキス化
現在,放線菌では4200検体,糸状菌では1200検体あまりの培養液エキスがあり,それらを96穴プレートに分注し,販売や共同研究先のアッセイ用として使用している。

なお,収集した微生物は共同研究先である産総研及び製品評価技術基盤機構にてDNAシーケンス(16S,18S)を行い同定を行っている。

(5)アッセイ,スクリーニング

現在,OPBIO及び共同研究先にて20種以上のアッセイが稼動している。1次スクリーニングの結果はデータベースに反映している。
沖縄産素材(海藻やフルーツ)から分離した乳酸菌については,MRS及び沖縄産素材(フルーツジュースなど)を発酵させ,その発酵液を用いて,チロシナーゼ阻害,抗酸化活性などを自社で評価した。
その結果,チロシナーゼ阻害活性を用いたアッセイで,非常に活性の高い株が1株(K41株)見つかった。この株は,ある沖縄産フルーツから分離した株である。この株を用いて,あるフルーツを発酵させると更に活性が上昇することが判明した。他の株で,MRS発酵液で活性の高いものを用いて,上述と同じ素材を発酵させても効果はそれほど上昇しないのでK41は上述の,ある素材と相性が良い株であると考えられる。

このK41株を用いた発酵物を用いて,現在美白化粧品の材料開発を行っている。チロシナーゼ阻害活性以外にもメラノーマB16細胞を用いたアッセイでコウジ酸に匹敵する効果を示しているので有望であると考えている。現在,特許出願中である。
また,石垣産海綿から神経突起伸張活性化合物(新規化合物)が単離された。現在特許申請中であるが,この化合物が得られた海綿は石垣でもTOP5に入るほどの分布量が多い種である。今後動物実験へステップアップさせるが,その際に必要な海綿素材は地元漁師さんに採集してもらうことの他,更に量が足りない部分は増養殖も検討し,地元への経済波及にも貢献するモデルをして進めたい。その他,共同研究先から新規活性化合物分離の報告が入ってきている。

(6)伝承効能聞き取り調査

八重山地方,沖縄本島地方及び九州地方において,地元に伝承される効能があるとされる素材の聞き取り調査を行っている。
現在,文献や公開されているDBに登録されていない情報が八重山地方で63件,本島地方で37件,九州地方で47件集まっている。この情報に基づいた素材も収集して,エキス化をしている。

事業化に向けての課題及び今後の取り組み

生物資源ライブラリーについて,海洋生物エキスについては現時点まで作製してきたものは有機溶媒で抽出をかけ,1度分配したのみである粗抽出液である。一方ユーザーのニーズとしては,分配したライブラリー及びできるだけ精製された化合物が欲しいとのことであるので,今後,付加価値を加える意味も込めて作製してきたエキスをベースにHPLCを用いた分画ライブラリー構築,更に,それらをベースにした化合物ライブラリーの充実を図れば更にニーズにマッチしたライブラリーになると思われる。


海洋生物エキスについては,非常に強い活性が見られることが多く,粗抽出エキスだと強い活性に弱い活性が隠れて検出できない事例が多々見られる。また,その隠れた活性中に新規の活性,新規化合物が見つかる可能性が高い。事実,名古屋大で見つかった神経突起伸張活性化合物(特許申請中)はそういった強い活性に隠れた活性成分であった。

また,弊社はこれまで独自では生物資源を収集するところに注力しており,スクリーニングは外部の共同研究先に依存していた。
今後知的財産を増やしていくためにも,オーピーバイオ独自のアッセイ系を立ち上げ,スクリーニングして行く必要があると考えられる。

微生物資源ライブラリーについては,現在,株としてのニーズがある放線菌,糸状菌,乳酸菌,酵母を中心に収集しているが,こちらについては,最近,量より質をというニーズの傾向が見られる。我々は上述の海洋生物エキスの高付加価値化と供に微生物資源ライブラリーについても高付加価値化を行うという意味も込めて,オーピーで得たシーケンス情報と既知化合物情報のデータベースを対比して,既知化合物をはじき,新規化合物がヒットし易いライブラリーの構築を行う予定である。

また,製薬企業等が採用しているアッセイ系を導入して1次スクリーニングをかけ,その結果についてDB化を行い,ユーザーが求める活性のヒット率が高いリソース作りを行って行きたいと考えている。更に,上述の独自で立ち上げるアッセイにかけていくことも並行させたい。

当該プロジェクト連絡窓口

オーピーバイオファクトリー株式会社 代表取締役 金本昭彦
メールアドレス:kanamoto@opbio.com
郵便番号:901-0152
沖縄県那覇市小禄1831-1
沖縄産業支援センター503
電話:098-891-8280
FAX:098-891-8281